納棺は死亡したその日のうちにすませるのが普通で、枕経が終り、祭壇の飾りつけが終わった後に納棺され、納棺後のあとに祭壇の手前に安置されて通夜を迎えます。そののち告別式が終了した時点で棺が遺族の前で開かれ、最後の対面になりますが、ここで花や副葬品が納められてから棺の蓋が完全に閉ざされます。
納棺に先だって、故人に白いさらしの経帷子(死装束)を着せます。経帷子は手甲や脚絆、そして白の頭陀袋から組み合わされています。
これを着せるにあたって、遺族の手で行なうことが大切です。経帷子は左前に合わせ、手足には手甲、脚絆をつけます。足袋をはかせるときには、こはぜをとり、わらじを履かせます。頭には白の三角布をつけ、手に数珠を持たせ、首から六文銭の入った頭陀袋をかけます。
経帷子は本来巡礼の装束で、死後は西方浄土に向けて巡礼に出発するという発想があります。
納棺の方法は、棺の底に薄手の蒲団、または白木綿を敷きます。次に死装束をつけた遺体を、遺族が全員でささえながら仰向けにして棺の中に入れます。手は合掌させて数珠をかけます。そして棺に蓋をしますが、出棺の時まで釘でとめることはしません。
出棺に先立ち、故人の棺のなかに入れるものとして、頭陀袋、杖、経典。あるいは生前愛用したタバコ、そして生花などがあります。
故人にもたせる杖は、ふだんとは逆に、太いほうを下に細いほうを手元に入れます。
女性の副葬品には櫛、カンザシなどがありますが、火葬のときに酒瓶や手鏡など燃えないものは禁じられています。
納棺のとき神父(カトリック)に来てもらい、納棺のことばを捧げてもらいます。遺体の両手は胸で組み合わせ、生前愛用していた十字架を持たせます。納棺は遺族で行い、遺体の周囲を白い生花で飾ったあと、蓋をして黒布で覆って安置します。
経帷子(きょうかたびら)、つまり経文を書いた衣を着せる起源は、もともと真言密教の説に基づいています。ダラニ(梵語の文句)の威力によって、これを身に帯びるなり衣に書けば、死を迎えるときにも心が乱れず、一切の仏が現われて慰めるという「ダラニ経」の一説から来ています。
経帷子に書く書式は宗派によって異なります。